れんが社さんより『恋の香り・こころ写して』が発表されました。
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─────夏。
今年は近年まれにみる猛暑だと、ニュースがはやし立てる。
そんな、暑い───暑い夏だった。
向日葵畑でラジオは歌い、誰かの麦わら帽子が風に舞い上がる。
ラムネのビー玉越しに見る空は、果てしなく青かった。
いつか見た、儚く綺麗な夏の夢。
その全てにサヨナラを言えないまま。
振れなかった手をひたすら伸ばす。
誰かがその手を取ってくれた。
今までどんな願い事にも届かなかった、俺の手を。
優しく、握ってくれる人がいた。
それが、あの夏が掛けたちっぽけな魔法。
どこにでもある、ありふれた奇跡。
潮風薫るこの町が俺にくれた、たった一つの宝物。
俺は、その手を握り返した。
ただひたすらに───この時が続くことを願って。
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舞台は夏の田舎っぽいですね。
夏に発売するのだろうか。